No.12 この先にある風景

小西 斐子
(こにし あやこ)
所属:制作部 ディレクター

学生時代の一つの体験が映像の世界に来るきっかけ。
被災地で行ったプロジェクトでのこと。
ふと、すぐ横の草むらに目をやると生い茂った草花が風に吹かれ、
その先に海が広がっていてとても綺麗だった。
でもすぐに、その根元には津波で流された家々の基礎がそのまま残っている様が
目に入ってきた。
そこに時の流れと、時が流れても風化し得ないもの、しかし着実に生命あるものの
営みは続き、壊れ朽ちたものを排除するでもなくその土地の一部として姿を
変えていることを感じ取ることができた。
現地で出会った人々の間でも、経験した者にしか交わすことのできない
言葉が交わされていた。

クラシック音楽のプレイヤーだった私は言葉も画も存在しない、
音の世界を表現してきた。
その後の音楽を離れた研究生活やフィールドワークで言葉の持つ強さを知り、
次は言葉では伝えきれないものを視覚的に‥自分の目で見て、自分の耳で聞き、
そこで感じたことを自分の一部にして、伝える。
そういう表現が出来る場所に行ってみたいと思った。

やりたいものはやりたい、自分の欲求には常に忠実。
でもその時すでに27歳。
今更社会への出方もよくわからない。迷っていたら知人のつてで素敵な女性に出会った。オルタスの創立メンバーの一人で、その方の話を聞くうちにオルタスで制作に携わってみたいと思うようになった。

入社して二年目、これまでとはお作法が違う世界、初めて属する組織というものに
最初は戸惑いもあった。
できない自分への情けなさや苛立ちもあったけれど一つが終われば
また次を楽しみにしている自分がいた。
現場の先輩達の手厚いサポートのおかげだ。
でも今はまだ、企画書もなかなかうまく書けないし、カメラを回せばぶれぶれ、
ロケに行けば頭はまっしろになるし、周りに迷惑もかけてばかり。

思いがあるだけでは前に進めない、険しい道はずっと続きそうだ。
しかし、それでも、この先に見てみたい風景はたくさんある。

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