二木 まさ美
(ふたつぎ まさみ)
所属:制作部 ディレクター
一番最近携わったのは、「宇宙移住」の実現に向けた番組。その前は情報番組で
夫婦問題や嫁姑問題など、半径500m以内の身の回りの出来事を取材してきました。
宇宙から嫁姑問題、両極端にも思いますが、
どちらも根本に人間の営みがあるという点では同じだと感じています。
どの取材でも毎回たくさんの出会いがあり、取材の中であらゆることを
教わっています。
これは、その体験の一つです。訪問看護の現場を取材した時のこと。
許可をもらい末期ガンの男性の家を訪れました。朗らかな男性です。
何度目かにお邪魔した際、その男性が看護師に対して不満を訴える場面が
ありました。
「元気になりたいから、食事をちゃんと食べて栄養を摂りたい」
ガンに蝕まれた男性の体は、食べ物を沢山食べると痛みが出るため、
食事制限は病院の先生の配慮でした。
しかし本人は、力いっぱいに怒り、生きる意志を訴えていたのです。
ディレクターになったばかりの私は突然のピリピリした空気にオズオズして
いましたが、カメラマンは、その姿をそっと撮ってくれていました。
その場面は、番組の山場の一つになりました。
取材の最後まで、「絶対に長生きしますよ」と強い意志を見せてくれていた
その男性は、オンエアの数日後に息を引き取りました。
「撮らせてくれたんだ」と、私はいつも思います。思い上がりかも知れませんが、
男性は自分の生き様を撮らせてくれたんだと、思っています。
勘の悪い私は、いつも現場で体験しないと、
気づくことができません。
今もオズオズしますし、撮っていいライン、ダメなラインはいつも悩みます。
それでも、撮らせてくれる人がいる。
だから、作れている。
当たり前のことだけど、この仕事を始めた頃に全身で実感させてもらった
この体験を、胸に留めていたいと、いつも思います。