No.27「 控えめに言って」

中学生のころ、不登校で、ボーっと映画ばかり観ていた。

でも何者かにはなりたくて、
なんとなく何かにはなれる気がしていて、
という典型的な思春期だった。

高校生で見よう見まねで仲間と映画を作るようになって、
そういう世界に憧れた。

高校卒業間近、学校にドキュメンタリーの密着が入って、
初めてそういう世界の人と知り合ってドキュメンタリーって
面白いかもなってちょっとだけ思った。

そこから2年ほどフリーターをした後、映像系の大学に入学
(親に泣きながら反対されるもそれを振り切って…)。

授業の中にドキュメンタリーがあって、
ドキュメンタリーは面白いと確信を持った。

卒業制作で初めてドキュメンタリーを30分作って、
自分のできなさに絶望し、諦めかけた。

それでも色々なご縁でオルタスに入ることになり、
入社1年目を終え、2年目を迎えた。

ここまでが、今ドキュメンタリーの制作会社に入った自分を語る上で
最低限必要な要素である。

でも上段に書いてあることの間にあった、
書ききれないほどの様々なことのおかげで、
今楽しく仕事をやってこられている、と思う。

17歳で出会った、心臓移植の待機中だった高校の先生に
「しんどい時は一緒に傷の舐めあいしようや」って言ってもらったこと。

19歳でビジネスホテルの夜勤をして、
いつも行く夜中のコンビニのオーナーにすごくよくしてもらって、
「絶対にあきらめるな」と言われ続けたこと。

本当に書ききれないほどの多くの恩がある。

先日初めて自分の企画でディレクターを務めた。
何人かの方にご報告がてら久しぶりに連絡させていただいた。

すごく喜んでくださった。
放送後に感想をわざわざメールで言ってくれた方もいた。

だからこそもっともっといい番組を作りたいって思った。
ひとつひとつ、今から自分がやっていく仕事で、恩返ししていきたい。

こんなにも嬉しくて刺激的なことがあるなんて、
あの時の自分に言ってあげたい。

大人って控えめに言って最高だ。

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