No.22 行動原理の追究

森川 毅
(もりかわ たけし)
所属:制作部

小さいころから私は人間に興味がなく、自然や他生物に夢中だった。

学生時代は、ヘビやカエルを両手いっぱいにぶら下げてジャングルを闊歩したり、
ガン細胞を培養しその上に自作のインフルエンザウイルスをぶちまけて、
ウイルスが細胞を溶かし殺していく様を顕微鏡で観察したりすることに精を出していた。

しかし、生物やウイルスばかり見ていたのに、気が付いたらなぜか、人間の営みを
これでもかというほど見つめ続ける「ドキュメンタリー制作」という、
かつての自分の志向とは対極に位置する世界に足を踏み入れていた。。。

自分を今の道に導いたのは、人間の行動原理の面白さだった。

大半の生き物の行動原理は「繁殖」と「生存」という2つの目的に繋がっているが、
人間の行動原理や“生きがい”は、上記の二項の枠には収まらないことが往々にしてあるように思う。

もちろん、生存と繁殖のために人間が起こす複雑な動きを追うのも面白いだろう。

でも私は、生物の本能に繋がっていないにもかかわらず、
人の行動を規定する要因を確認し、探りたいと思った。

新型コロナをはじめとしたウイルスは、細胞という構成単位がなく、
代謝系を持たないためエネルギー生産もできず、単独で増殖できないことから、
他生物に寄生しなければ存在を保てない非生物として一般に扱われる。

私は生物学を研究する中で、人間と他生物の間にも 、
ウイルスと生物の間に確かに存在する壁と同じくらい
はっきりとした区別の壁が存在しているように思われ、
それがとても興味深かったのだ。

まあ、人間は他生物と意思疎通を図れないので、
他の種族の生物も「繁殖」と「生存」以外の原動力を持っている可能性は否めないし、
この考えは私の個人的な思い込みの域を出ないのかもしれないけれど。

そんなこんなで大学院進学を辞退し、
フリーターとして多様な職種を渡り歩きながら、
様々な人の行動原理に触れる生活をしてきた。

それから、もっと多くの人と関われる仕事を求める中で、
ドキュメンタリー制作にたどり着き、今に至る。

現在はまだ業界一年目で、日々の業務をこなすだけで精一杯だが、
いつか観る人に自分の行動原理や価値観について
考えてもらえるような番組を、作りたい。

 

 

 

PAGE TOP